2016年3月20日日曜日

第1回 「試験用 経済学」は一橋大学がつくった。

ミクロ・マクロ経済学の教育に力を注がれた教員(といっても、巨匠の弟子たち)がここ数年、退官されるのが目立ってきています。

明治政府が、日本語とは別に誰でも通じる「国語」の教育に力を注いだように、日本国政府は近代経済学の普及に努めました。その背景として、戦後、しばらくの間、経済学といえばマルクス経済学が圧倒的に人気があったからです。

日本国政府の役人になるための国家公務員試験でマルクス経済学を出題するわけにはいきません。
しかし、当時、東大や京大はマルクス系が強かったため、国家公務員や国家資格の試験委員は一橋大学の教員が中心となりました。
例えば、外交官試験用の大学サークルは、別名「荒憲治郎対策」、「アラケン」とも言われ、その言葉だけで何かわかったのです。
マルクスを学んだ東大生が、一橋大の教員がつくったマクロ経済学の問題を解いて、官僚になる!なんとも不思議な時代があったのです。

日本の将来を担う大学生への近代経済学教育に力を注いだ教員に敬意し、その「言葉」を継承していかなければなりません。それが、アメリカでもイギリスでもない、日本の経済学なんです。
(日本の大学へ来る留学生は、今後は、国や地域が拡大する予定です。彼らが学びたい経済学は、日本の経済学のはずです。)

一方、日本のマルクス思想も独特の進化を続け、今なお、人文科学系に根付いているのも、やはり、日本の大学生への「勉強のきっかけ」には、良い題材なんだと思われます。
そして、マルクス思想を指導している教員は、世間では批判されがちですが、学生の面倒見も良いし、教育にものすごく熱心です。
このあたりは、近代経済学の教員は、政府の仕事や自分の研究もたいせつだけど、見習わなければなりません。